プレイバックシアター(Playback Theatre)とは?
 

 プレイバックシアターは、1970年代の米国・ニューヨークでコミュニティーを育もうとした芸術活動の中で
生まれた即興劇です。
 参加者が自分の体験や思い出を語り、その話をその場にいる役者や参加者が、打合せ無しで演じると
いうもので、今、新しいコミニュニケーション手法として、世界中で親しまれています。
 そこでは何気ない日常のストーリーが鮮やかな舞台劇となって再現されます。またときには、辛く悲しい
ストーリーも語られ心が震える体験もあることでしょう。プレイバックシアターのステージには、生きることの
賛歌や示唆に富んだ教訓など、私たちが生きていく上での新しい可能性の発見があるのです。

【プレイバックシアターの始まり】

 プレイバックシアターは1975年、米国のジョナサン・フォックス氏によって創始されました。ジョナサンは
ハーバード大学在学中以前より、人類早期の口述伝承、古代叙述詩、吟遊詩、前衛芸術、演劇などに
興味を持ち、研究していました。しかし彼は通常の演劇界の名声の競い合いになじめずにいました。
 そのような彼の転機になったのは、海外協力隊として生活したネパールにおける体験でした。ネパールの村
では、村民が集い、語りや儀式が行われ、一体感のあるコミュニティが形成されていました。そしてそのような
場が古代の演劇や儀式と共通点があることに気付き、プレイバックシアターのイメージが徐々にできあがって
いったのです。

【サイコドラマの学び】

 サイコドラマとはルーマニアの精神科医ジェイコブ・レヴィ・モレノ氏によって創始された集団精神療法です。
即興劇の手法を用いて、私たちが現実社会で身に着けている社会的役割を見直し、さまざまな観点から新し
い役割を自由に演じることで、新しい行動や生き方を見つけようと試みる手法です。
 ジョナサンは人々の心の辛い体験を演じる勇気を得るためには、サイコドラマを学ぶことが必要であると
考え、モレノの妻で卓越したサイコドラマ指導者であるザーカ・モレノに師事し、米国サイコドラマ協会指導者資格(TEP)を取得しました。
 その後ニューヨークで、彼のビジョンである「人々の体験をプロの役者でない一般の人々が台本なしに演じる」
プレイバックシアターが出来上がりました。

【プレイバックシアターの目的】

 プレイバックシアターでは、参加者それぞれの生き方、考え方を尊重し分かち合うことにより、生きることへの
勇気、希望、自己発見、新たな創造性の開花をもたらすことができます。
 創始者ジョナサンは次のように語っています。 「プレイバックシアターは治療的ではあるが、治療そのもの
ではなく演劇である。演劇ではあるが、結果として治癒効果があり人々の心の渇きを癒している。」

 【プレイバックシアターの不可欠な技術】

 ジョナサン・フォックス氏は、プレイバックシアターを行なう上での不可欠な技術として、次の三領域の習熟
を提唱しています。

1.社会的統合(居心地の良い場を作るために)
   ☆状況把握、管理力、安全性、心理学の知識、包括力、社会問題の知識、解り易い言葉など。

2.儀式性・リチュアル(プレイバックシアターを成立させる仕組みを維持するため)
   ☆リチュアルのルールを守る、忘我的感情、トランスパーソナル、変容力、魅惑的な言葉など。

3.芸術性(芸術的な舞台を作るために)
   ☆美的感覚、表現力、独創性、多様性、多彩な才能、チームワーク、物語調の言葉など。

 この三領域における技術をバランスよく習熟していることが、プレイバックシアターを良い雰囲気で
行なうことの条件だと定義しています。 

【マグノリアの基本的立場】

 しかし、プレイバックシアターを演じているだけでは、これらの技術の習得は難しいのではないでしょうか。
私たちは、この三領域におけるひとつひとつの課題の研究や実践を通じて、総合的な技術の向上を目指し、
より良いプレイバックシアターを創造していきたいと願っています。
 私たちは、誰でも語りたいストーリーがあると考えます。そしてそのストーリーの中に、過去の歴史、物語、
神話といった普遍的な人類の英知が隠されていることを基本として捉えています。
 私たちは、すべてのストーリーを批判、善悪の判断することなく聴き、敬意をもって表現する精神を養うために、
サイコドラマなどの心理的なワークや精神的な成長を育む学習活動を続けています。

【プレイバックシアターの活用分野】

★社会人…身近に起きた出来事を分かち合うワークショップを通して、互いの価値観や考え方の違いを認め
合える場や自分自身を客観的に見つめられる場づくりをします。

★子どもや保護者…のびのびと自分自身を表現したり親子が同じ立場で参加し、互いに新たな気づきを促します。

★企業研修…リーダーシップやチームワークのスキルアップ、クリエイターの創造力アップを育成します。

★学校教育…いじめや不登校などの現象を扱うことにより、互いの立場に気付き分かち合う時間を作ります。
児童、生徒に思いやりの心、自発性を育てます。
 卒業式、謝恩会など思い出を分かち合う場にも活用できます。

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